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2010年4月19日 (月)

スチュワードシップ

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皆さんは、「スチュワード」という言葉から何を連想されますか。私にとってこの言葉は飛行機の男性客室乗務員以外は思いつかない言葉でした。ですから、スチュワードの仕事の内容を表すと思われる「スチュワードシップ」という言葉が「ニッセイ/ハーミーズ・スチュワードシップ・ファンド」のようにファンド名に使われていたり、その他投資の世界で一般名詞として使われるのを耳にしたときには、何を意味するのだろうかと思いました。

そこで、いくつかの英英辞典で “steward” という言葉をひいてみました。Stewardには、お屋敷などの家事全般を取り仕切る人という意味があります。いわゆる「執事」というイメージでしょうか。その仕事のなかには使用人の監督や賃料の取立て、帳簿付けが含まれています。そこから、貴族などの資産の管理をする人も指すようになったようです。現在では、stewardの仕事を表すstewardshipという言葉は飛行機や船の客室乗務員の仕事を指すほか、他人の所有物の管理を意味するときにも使われています。

なるほど。だから、投資家が他人の資産を預かってそれを増やそうとする場合、投資家は「スチュワード」として、人の資産を管理していることになるのですね。しかし、現在、投資の世界で「スチュワードシップ」という言葉が使われる場合、ただ資産を預かって投資先を見つけ、その資産を増やすという以上のニュアンスが含まれているように思います。責任をもって資産の管理を行うため、投資先の企業を監視(monitor)し、必要があれば積極的に関るという意味が込められているようです。

現在英国では、財務報告評議会(Financial Reporting Council、FRC)が “Stewardship Code for Institutional Investors” に関する意見を募っています。これは、もともとInstitutional Shareholders’ Committee (ISC)という団体が、 昨年秋に “Code on the Responsibilities of Institutional Investors”という投資家責任に関する行動規範を作成したことから始まりました。ISCは、保険会社、投資信託、投資顧問、年金基金の団体が集まって作っている団体*です。その後、首相の肝いりで英国の銀行のコーポレート・ガバナンスについて報告書を作成したMorgan Stanley International会長のSir David WalkerがFRCに対し、ISCの行動規範を “Stewardship Code”と名づけたうえで採用することを求めました。FRCは企業のコーポレート・ガバナンスに関する統合規範を管轄している、英国の企業会計等に関する規制当局です。

“Stewardship Code”ではどのようなことが投資家にとって望ましい行動とされているのでしょうか。ご紹介しましょう。

1.    機関投資家は、どのようにして「スチュワードシップの責任」を果たそうとしているのか、その方針を公表しなくてはならない。

2.    機関投資家は、スチュワードシップに関する利害の調整に関し堅固な方針を持ち、その方針は公表されなくてはならない。

3.    機関投資家は投資先企業を監視しなくてはならない。

4.    機関投資家は株主価値の向上と保護の手段として、いつ、どのようにその活動のレベルを引き上げるのか、明確なガイドラインを作成しなくてはならない。

5.    機関投資家は、妥当だと判断される場合には他の投資家と共同歩調をとることに前向きでなくてはならない。

6.    機関投資家は議決権行使と行使結果の開示に関し明確な方針を持たなくてはならない。

7.    機関投資家はスチュワードシップ活動と議決権行使に関し定期的に報告を行わなくてはならない。

これをざっと読むと、機関投資家は投資先企業を「監視しなくてはならない」など、投資先に対する関与を強める方向に動かざるを得ないと予想されます。あまり嬉しくないと思われる企業さんもいらっしゃるかも知れません。しかし一方で、投資家サイドも、議決権行使結果を開示しなくてはならなくなります。機関投資家はこの規範に即した行動を採らない場合はその理由を説明しなくてはならないことが前提となっています。

企業に対する透明性や開示の要求は以前からありましたが、投資家に対する開示の要求も強くなっており、企業・投資家ともに透明性が求められる時代になってきたといえましょう。上のStewardship Codeは企業側も投資家側も、一緒に企業価値を高めるために頑張っていきましょうというメッセージのようにも感じられます。

最近では、英国の動きは他の欧州諸国にも広がりを見せています。オランダの機関投資家団体であるEumedionは、オランダ政府にも同Codeに盛られた考えを検討するよう推奨すると同時に、自分たちもワーキング・グループを作り今年末を目処に報告書を作成すると発表しました。

この動きはもとに戻ることがないばかりではなく、色々な国に広がっていくと思われます。日本でも検討される日がくるでしょう。それならば、企業としては、投資家による議決権行使結果の開示を利用しつつ、投資家との一層積極的な対話をはかっていくしか道はないのではないでしょうか。

*参加団体はthe Association of British Insurers、the Association of Investment Trust Companies、the Investment Management Association、the National Association of Pension Funds。

(雨やどり)

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